2018年3月6日火曜日

映像美のキーカラーは「ティール」~ 映画「シェイプ・オブ・ウォーター」

ご覧くださって、
ありがとうございます。
カラーリスト・色彩講師の
千葉真須美 です。

昨日はアカデミー賞授賞式が
行われました。

最多受賞作品は
「シェイプ・オブ・ウォーター」
作品賞、監督賞、美術賞、作曲賞の
4部門での受賞を果たしました。

私は先週末にこの作品を観まして、
美しい映像・美しい音楽で描かれた
大人のおとぎ話を堪能しました。

(少々グロテスクなシーンも含まれているので、
苦手な方もいらっしゃるかもしれませんが…)

-ということで、
今日は「シェイプ・オブ・ウォーター」の映像作りで
ポイントになっている「」について取り上げます。



 ティール(Teal) 青緑 


この作品のキーカラーは  ティール(Teal) という色です。
ちょうどポスター中央部分の 青緑 がこの色です。

Teal とは、もともと小さい鴨のことで、
この鴨の羽に見られる青緑も Teal と呼ばれています。
日本の伝統色にも「鴨の羽色(かものはいろ)」という
色があり、ティールより若干暗めの色です。

「シェイプ・オブ・ウォーター」では、
物語の舞台となる研究施設 や 主役の女性の衣装、
そして捕らわれた生物(彼)の身体にも
ティールのバリエーションカラーが用いられ、
海の中を思わせる映像世界を作り上げています。

おまけに、彼を殺そうとする悪役が購入した
高級車のボディカラーもティール。

「緑でしょ!?」
「いえ、”ティール” です!」

というようなやり取りがギャグになってました。(笑)

また、ラストの女性の衣装などに見られる
緑系の中でアクセントカラーとなり、
画面の印象を深めています。
ポスターも同様ですね。

この作品をこれからご覧になる方は、
ぜひ ティール を中心としたカラーリングに
ご注目ください。


*映画 公式サイト の予告編でも
 ティールの世界をごらんいただけます。




2018年3月1日木曜日

大人の塗り絵|明清色と濁色でつくる対照的な世界観

インドネシアの仮面と女性を描いた大人の塗り絵作品
colored by Masumi Chiba

今回ご紹介する大人の塗り絵作品は、インドネシアのイラストレーター、Nicholas Filbert Chandrawienata さんの作品集「EIRENE」の中の一枚を塗ったものです。

(この画像を Instagramにアップしたら、なんとNicholasさんご本人から「So nice!」とコメントをいただいて、大変嬉しかったです!)


■ 配色のポイントは明清色と濁色

・イラストのタイトルをヒントにイメージを広げる

この作品には「envy」というタイトルが付けられています。「ねたみ、うらやみ、羨望の的 …」といった意味です。

そう言われてみると、左側の怪しげな面々が美しい女性をねたんだり、うらやんだりしているように見えてきます。あるいは、このような美しい女性の心の中にも暗い部分が潜んでいる…とも受け取れます。

そこで、配色には明清色と濁色を取り入れることにしました。


・清色(明清色、暗清色)と濁色

清色とは、純色に白または黒を加えてできる色です。純色に白を加えた明るいトーンの色を明清色、黒を加えた暗いトーンの色を暗清色といいます。

純色に白と黒、つまりグレーを加えた濁りのある色は濁色といいます。

イラストの左側、妖しげな仮面が描かれている部分は濁色中心でまとめて重たい雰囲気に、女性から右上の花にかけては明清色でまとめて明るい雰囲気にすることで、対照的な二つの世界を作りたいと考えました。

明清色と濁色、2つの色調の効果はいかがでしょうか?

濁色は「濁った色」というとあまり印象が良くないかもしれませんが、グレイッシュカラー、柔らかい色、渋い色などと捉えると、印象も良く、活用のイメージが広がります。

清色(明清色、暗清色)と濁色という色の分類も、配色のアイディアに加えていただければと思います。