2021年5月17日月曜日

「サロメ」|装丁に見る、黄色と黒が果たす役割

原田マハ 著「サロメ」の表紙カバーと配色例
原田マハ「サロメ」(文庫本)


今回は、原田マハ 著「サロメ」の大変魅惑的な装丁を取り上げます。

この作品は画家ビアズリーと彼の姉、そしてオスカー・ワイルドの関係を中心とした物語で、表紙カバーに使われている絵は、ビアズリーが描いた「サロメ」からの一枚です。


■ 黄色と黒の配色が伝えること



ビアズリー作品「サロメ」の挿絵と、イエロー・ブックの表紙
ビアズリー作品(左)「サロメ」より、(右)イエロー・ブック表紙


・「イエロー・ブック」の黄色を取り入れて

ビアズリーによる作品は白黒ですが(画像左)、装丁デザインでは白の代わりにビビッドな黄色が使われています。この色使いは、ビアズリーが表紙を手掛けた季刊誌「イエロー・ブック(The Yellow Book)」(画像右)を再現しているようです。


・黄色+黒の配色効果

黄色と黒は 誘目性(=人の目を引きつける度合い)が大変高い組み合わせです。「注意」を促す配色でもあり、標識や踏切の遮断器など危険を知らせる表示に用いられています。

そのため、この配色を見ると、多少なりともどこか危ないイメージを感じることと思います。

また、この2色は明度、彩度の差が大きくダイナミックな配色なので、ビアズリーの繊細で妖しい線画にドラマチックな雰囲気を加えています。

まとめると、この装丁の黄色と黒の配色は、ビアズリーの「イエロー・ブック」との関連性を示しながら、人の注意を引きつけ、物語のドラマ性を伝える役割を果たしていると言えます。

私自身も書店で思わず手に取ってしまったのでした。