2018年12月16日日曜日

快適さと回復力を与える珊瑚色~パントン・カラー・オブ・ザ・イヤー2019/ Living Coral


ご覧くださって ありがとうございます。
カラーリストの千葉真須美です。

早いもので 2018年も残すところ 2週間となりました。
そろそろ今年一年を振り返りながら、
来年はどんな年にしたいか思い描く時期ですね。

さて、毎年 新しい年のイメージについて
ヒントを与えてくれる色、
パントン・カラー・オブ・ザ・イヤー
先週発表されました。

2019年は Living Coral 、珊瑚の色です。




珊瑚礁は海に住む動物たちを守るシェルターであり、
同時に栄養源でもあります。
それと同じく、鮮やかでまろみのあるこの色は
暖かく優しいエネルギーで私たちを包み込み、
変化する環境の中で快適さと回復力をもたらしてくれます。

近年の パントン・カラー・オブ・ザ・イヤーは
ソフトな色や深みのある色が続いていましたが、
今回はガラリと変わって明るく鮮やかな色です。
目にしただけで私たちを元気づけてくれるイメージが
伝わってきます。

そして、少々柔らかみのある色調である点もいいですね。
強い色調(彩度が高い色)では刺激が強いため、
見る人に疲れを生じさせる場合もあります。

また、イメージ動画が大変上手だと思いました。
( → こちらのサイト でご覧いただけます)

珊瑚の背景となっている水の色は

・珊瑚の色と補色関係にあるので、
   珊瑚色をより鮮やかに見せる(補色対比)

・珊瑚の色より彩度が低いので、
   珊瑚色の鮮やかさを強調して見せる(彩度対比)

これら 2つの効果で
珊瑚色をより生き生きと見せています。

そこに魚、泡、そして光の柔らかい動きが加わり、
鮮やかさと優しさが混在するイメージに仕上がっています。

この Living Coral を取り入れるなら、
スカーフ、手袋などのファッションアイテムや、
ダイアリーやマグカップなどの小物類がおすすめです。

どこかへ出かけたくなったり、
誰かとおしゃべりしたくなったり、
そんな前向きな気分にしてくれることでしょう。



*画像は PANTONE サイト よりお借りしました





2018年8月15日水曜日

「黒」は何色からできている?

「女子中学生の小さな大発見」新潮文庫

ご覧くださって、ありがとうございます。
カラーリスト・色彩講師の千葉真須美です。

先日、夏休みらしい雰囲気の本を読みました。
タイトルは「女子中学生の小さな大発見」
女子中学生によるちょっとした実験や観察をまとめたもので、
クスッと笑ってしまうユニークな内容です。
今年の「新潮文庫の100冊」の1冊でもあります。

この中に
「サインペンの黒色は何色からできているか?」
という、気になる実験がありました。



黒は何色からできているか? 実験で確認


実験方法は、コーヒーフィルターにサインペンで印をつけ、
水でにじませて色の変化を観察するというもので、
結果として、メーカーによって異なること、
黒と言っても、青、オレンジ、ピンク、緑、紫など
いろいろな色が混じっていることがわかったそうです。

色彩学の基礎的な内容(色彩検定3級レベル)の一つに
混色」があります。混色とは「2色以上の色を
混ぜ合わせて他の色をつくること」です。

絵の具などの色材は、
三原色の シアン、マゼンダ、イエロー を混ぜると
黒(厳密には黒に近い色)になりますが、それとは反対に
黒の中に含まれている色を見つけようとしたのがこの実験ですね。

簡単な実験なので、私も真似してみました♪

キッチンペーパーに、ペンテルとステッドラーの
2種類の黒サインペンで丸を描きます。



左/ペンテル、 右/ステッドラー

その上に水を数滴たらしてみると…



左/ペンテル、 右/ステッドラー

左のペンテルからは少々緑みを帯びた青が、
右のステッドラーからは紫、オレンジ、黄色などが現れました。
ペンテルは筆記具、ステッドラーは画材という点が
このような色の複雑さの違いとなっているのでしょう。

「黒」はさまざまな色を含んでいるということが
自分自身の目で簡単に確認できて面白いですね。
テキストで理論を学ぶだけでなく、
時には自分で試してみることの大切さを再認識しました。






2018年6月17日日曜日

映画「万引き家族」で、心に残ったこの色

ご覧くださって、
ありがとうございます。
カラーリストの 千葉真須美 です。

カンヌ映画祭でグランプリに輝いた
話題作「万引き家族」を観ました。

「ほんとうの家族とは?」と、
家族について考えさせられる
余韻の深い作品でした。

この作品を観終えて
大変心に残った色があります。
今日はその色のお話ですが、
ネタバレになりますので
ごれからご覧になる方は
ご注意くださいね。




印象的な「万引き家族」の黄色


「万引き家族」で
私の印象に強く残った色は 黄色 です。

一つはとうもろこしの黄色、
もう一つは水着の黄色です。

冬の寒空の下、
家から閉め出されてしまった5歳の女の子を、
ある家族が保護します。
一家は、暴力を受けた跡が残るその子を
家に返すことができず、一緒に暮らすことに…。

少女が心を開き始め、
家族の一員らしくなってきた夏の晩、
一家は大きな鍋で茹でたトウモロコシを食べながら
ごくありきたりの楽しい時間を過ごします。

また、ある日、
少女は黄色いワンピースの水着を買ってもらいます。
嬉しさのあまり、お風呂に入るのにも水着を着る少女。

この水着を持って家族全員で出かけた海水浴が、
一家の最後の楽しい思い出となりました。

黄色から受けるイメージは
無邪気さ、明さ、楽しさ、元気 などです。

家族団らんのトウモロコシの色、
家族で海へ行った時の水着の色、

これらの黄色が
少女の、そして一家の幸せなひと時を象徴すると同時に、
映像に輝きを与えていたように感じました。




2018年5月14日月曜日

しあわせな気持ちになれる色彩 ~ 映画「しあわせの絵の具」

ご覧くださって、
ありがとうございます。
カラーリストの 千葉真須美 です。

先日
「しあわせの絵の具
  愛を描く人 モード・ルイス」
という映画を観てきました。

特に注目していた作品というわけでは
なかったのですが
「人生は、
   美しい色であふれている。」
このキャッチコピーを見てしまったら、
観に行かないわけにはいきません!




陽の光を感じる暖かな色彩


主人公は「カナダで最も有名な画家」と呼ばれる
モード・ルイス という女性です。
若年性リウマチのため手足が不自由ながらも、
夫と二人、小さな家で質素に暮らす中で
絵を描き続けることが彼女の幸せです。

「うちの息子でも描ける」と
雑貨屋の主人に言われてしまう彼女の絵は、
どれも明るいトーンで伸びやかに描かれています。
絵画は「写実的=上手」と捉えがちですが、
彼女のように自分の世界を持っていることは
誰にも真似できない上手さなのだと思います。

真っ白な猫、真っ黒な猫、赤い屋根、色とりどりの花々…。
彼女の作品を見ていると、
カラフルな色彩に暖かい陽の光を感じ、
とても開放的で良い気分になります。
部屋に一枚欲しい!と思ってしまいました。

*モード・ルイスの作品は 映画公式サイト
 「Gallery」で見ることができます。

また、映画を観ていて、
映像全体の色のトーンを抑えていると感じました。
>
グレイッシュで静けさを漂わせる風景は、
二人の素朴な生活感を伝え、
同時に彼女の作品世界をより鮮やかに見せる
効果を生んでいると思います。

美しい風景と作品の数々を目にしながら、
幸せな気持ちになれる素敵な作品でした。





2018年3月6日火曜日

映像美のキーカラーは「ティール」~ 映画「シェイプ・オブ・ウォーター」

ご覧くださって、
ありがとうございます。
カラーリスト・色彩講師の
千葉真須美 です。

昨日はアカデミー賞授賞式が
行われました。

最多受賞作品は
「シェイプ・オブ・ウォーター」
作品賞、監督賞、美術賞、作曲賞の
4部門での受賞を果たしました。

私は先週末にこの作品を観まして、
美しい映像・美しい音楽で描かれた
大人のおとぎ話を堪能しました。

(少々グロテスクなシーンも含まれているので、
苦手な方もいらっしゃるかもしれませんが…)

-ということで、
今日は「シェイプ・オブ・ウォーター」の映像作りで
ポイントになっている「」について取り上げます。



 ティール(Teal) 青緑 


この作品のキーカラーは  ティール(Teal) という色です。
ちょうどポスター中央部分の 青緑 がこの色です。

Teal とは、もともと小さい鴨のことで、
この鴨の羽に見られる青緑も Teal と呼ばれています。
日本の伝統色にも「鴨の羽色(かものはいろ)」という
色があり、ティールより若干暗めの色です。

「シェイプ・オブ・ウォーター」では、
物語の舞台となる研究施設 や 主役の女性の衣装、
そして捕らわれた生物(彼)の身体にも
ティールのバリエーションカラーが用いられ、
海の中を思わせる映像世界を作り上げています。

おまけに、彼を殺そうとする悪役が購入した
高級車のボディカラーもティール。

「緑でしょ!?」
「いえ、”ティール” です!」

というようなやり取りがギャグになってました。(笑)

また、ラストの女性の衣装などに見られる
緑系の中でアクセントカラーとなり、
画面の印象を深めています。
ポスターも同様ですね。

この作品をこれからご覧になる方は、
ぜひ ティール を中心としたカラーリングに
ご注目ください。


*映画 公式サイト の予告編でも
 ティールの世界をごらんいただけます。




2018年3月1日木曜日

大人の塗り絵/「澄んだ色・濁った色」を活用

colored by Masumi Chiba

ご覧くださって、
ありがとうございます。
カラーリスト・色彩講師の
千葉真須美 です。


さて今日は
「大人の塗り絵」です。

上の画像は、インドネシアの
イラストレーター Nicholas
Filbert Chandrawienata さんの
作品集「EIRENE」から一枚を
塗ったものです。

(この画像を Instagram に
アップしたら、なんと
Nicholasさんご本人から
「So nice!」とコメントを いただいて、大変嬉しかったです!)



配色のポイントは明清色と濁色 


今回は配色を決める際に
「明清色と濁色」を意識しました。

明清色とは純色に白を加えてできる明るく澄んだ色です。
反対に、濁色は純色にグレーを加えた濁りのある色です。

この作品には「envy」というタイトルが付けられています。
「ねたみ、うらやみ、羨望の的 …」といった意味です。
そう言われてみると、左側の怪しげな面々が美しい女性を
ねたんだり、うらやんだりしているように見えてきます。

あるいは、このような美しい女性の心の中にも
暗い部分が潜んでいる… とも受け取れます。

そこで、左側は濁色中心でまとめて重たい雰囲気に、
女性から右側は明清色でまとめ光り輝くような雰囲気にして、
対照的な二つの世界を作りたいと考えました。

明清色と濁色、2つの色調の効果はいかがでしょう?

このように「澄んだ色、濁った色」という観点から
色をまとめるのも一つの配色手法です。

色鉛筆の中には、明清色か濁色かを見きわめるのが
難しい色もありますが、あまり神経質にならず
パッと見た感覚で判断して良いと思います。

また、濁色は「濁った色」と言うと聞こえが良くありませんが、
「グレイッシュカラー」「渋い色」と捉えると印象も良く、
活用のイメージが広がるのではないかと思います。
ぜひお試しを!



2018年2月19日月曜日

かわいい!と評判のメダルのリボンは、これに基づいて配色?

https://www.pyeongchang2018.com/en/medal

ご覧くださって、ありがとうございます。
カラーリストの 千葉真須美 です。

平昌オリンピックで日本人選手の活躍が続いています。
羽生選手、宇野選手に引き続き小平選手も!
連日メダリストの姿がテレビやネットに映し出されるにつれ、
「メダルのリボン(ストラップ)の色がかわいい!」
評判になっています。

淡い ピンク水色 の組み合わせは、
気の早い春いを思わせる 優しくてかわいい色合いですね。

この配色を見てピン!と来ました。

この2色は韓国の国旗「太極旗」をもとに
配色されたのではないでしょうか?





太極旗は中央に赤と青で成り立つ円が描かれています。
この円は宇宙を表し、世界は 陰と陽、天と地、男と女 などのように
相反するものを包括して成り立っていることを示しています。

この赤と青が メダルのリボンに
取り入れられているように思えます。

しかし、そのままの色ではちょっと鮮やかすぎて
メダルの繊細なデザインが目立たなくなりそう…。

そこで、

赤と青それぞれに「白」を加えて
メダルに調和するソフトな色合いに調整したのが、
今回のリボンのピンクと水色なのではないか?

-というのが私の推理です。

因みに、リボンの素材には韓国の伝統衣装の生地を
使用しているようです。

このリボン以外にも、オリンピックでは
たくさんの美しい色が見られます。
色を楽しんだり、色が選ばれた理由を考えたり、
色という視点からオリンピックを見てみるのもおすすめです!


*画像は 平昌オリンピック公式サイト よりお借りしました。




2018年2月17日土曜日

祝・金メダル! 羽生結弦選手、主役にふさわしいファッションカラー


ご覧くださって、ありがとうございます。
カラーリストの 千葉真須美 です。

今日は日本中が緊張、そして歓喜の一日でしたね。
平昌オリンピック、フィギュアスケート男子で
金メダルの羽生結弦選手、銀メダルの宇野昌磨選手、
本当におめでとうございます!仙台人としても嬉しい!!

私も午前中からテレビの前に釘付けで、
感じた事はたくさんありますが、
このブログでは「色」について取り上げます。

今大会のフィギュアスケート会場は
深い紫色をメインにしたカラーリングです。
(上の画像は青が強く出ています)
テレビ放映では、この紫色を背景とした
選手の姿がよく見られました。

色は背景色によって見え方が変わります。
明るく見えたり、暗く見えたり、
鮮やかに見えたり、くすんで見えたり、
そして、目立ったり、目立たなかったり…。

会場の紫色を背景にした時の選手の衣装は、
深い色や暗い色の場合は映えにくかったし、
くすんだ色の場合はさらにくすんで見えました。

宇野選手のネイビーや、
パトリック・チャン選手のボルドーなど、
白い氷の上では映えますが、紫色の前では
美しさが一歩後退しているように感じました。

それに対し、羽生選手の光沢のある白い衣装は
紫の背景にじつに良く映え、大変きわだって見えました。

その上、襟・肩・袖にあしらわれている紫とブルーは
背景色に馴染んで、会場との一体感を生んでいました。
まるでこの会場に合わせて用意されたかのような
衣装だと思いました。

ハビエル・フェルナンデス選手の衣装は、
同じ白系でもクラシカルなオフホワイトなので、
羽生選手に比べるときわだち感がいま一つでしたね。

羽生選手は、華麗な演技に加え、衣装の美しさの点でも
金メダルにふさわしいまさに今日の主役であったと思います。