話題の小説、有吉佐和子著「青い壺」を手にし、ふと、緑(青緑)の表紙に目が留まりました。タイトルに「青」という色名が入っていると表紙にも青を使いそうなものですが、緑(青緑)が使われていることに軽い疑問を感じたからです。
もしかしたら、同じように感じられた方がいらっしゃるかもしれません。
そこで、今回はこの表紙の色を取り上げながら、青と緑の関係をご紹介したいと思います。
青磁の色には幅がある
この作品は青い壺が関わる13の物語を集めた連作短編集です。読み始めると、青い壺は青磁(せいじ)であることが分かります。
青磁というと、透明感のある淡い青緑を思い浮かべる方が多いと思います。日本の伝統色名でも、「青磁色」は「やわらかい青みの緑」と表わされています。
しかし、物語を読み進めると、登場人物たちは壺の色を「春の空みたい」「まるで青空のような色」「私のお母さまの眼の色」と表現します。どうやら壺は緑ではなく青のようです。
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| 出典:國立故宮博物院(National Palace Museum, Taipei) |
実際、青磁の色には幅があり、画像のような青系の作品も少なくありません。こちらは台湾にある故宮博物院所蔵の汝窯青磁無紋水仙盆ですが、以前に実物を見た際は、やはり「青」と感じた記憶があります。この青は天青(てんせい)と呼ばれる淡い青色の釉薬により生まれる色で、雨上がりの空の色とも言われています。
そこで、「青い壺」の表紙の色は、壺の色を伝えることよりも、「青い壺」が青磁であることを示すために緑系の色にしたのではないかと考えました。
緑は青に含まれる
また、日本には緑を「青」と表現する文化があります。例えば、身近なところでは青信号、青葉、青りんご、青竹、青虫など。
これは中国の五行思想の五色が朝鮮半島を経て日本に伝わり、日本の文化として定着したものと言われています。五色は 青・赤・黄・白・黒 で、緑は青に含まれていて、中国、韓国、日本では「青=青+緑」という色彩文化が現在も残っています。
例えば、中国でも青菜、青山(緑の山)、青蛙といった表現がありますし、韓国大統領府・青瓦台(チョンワデ)の屋根の瓦は青緑色です。
このような文化的背景があるため、緑色の壺を「青い壺」と表現しても、日本人は感覚的に受け入れられ、大きな違和感は生じないのではないでしょうか。
これらのことから「青い壺」の表紙に緑が採用された背景には、
・青磁であることを象徴している
・青は緑も含んでいる
といった理由も含まれているのではないかと感じました。そう考えると、この緑は自然な色選びであると思えてきます。
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※「青い壺」については、姉妹ブログの「IROKORO」と note でも記事を掲載しています。視点の異なる内容となっていますので、合わせてご覧ください。
・「IROKORO」:読書の感想と、壺の青が与えるイメージについて
▶【読書 × 色】「青い壺」~人々を静かに見つめる青
・note:物語と色から広がる、さらに踏み込んだ考察
▶「青い壺」の壺は、なぜ青なのか?


