前回の記事では、「流行色」ということばが示す色について解説しました。今回は2025年を振り返り、今年人気を得た色や注目された色を、その背景とともにご紹介します。
■ ニュートラルカラーとくすみカラーの継続人気
昨年に引き続き、今年もニュートラルカラーとくすみカラーの人気が継続しました。この2つは、ファッション、インテリア、コスメ、プロダクトなどに、幅広く取り入れられました。
・ニュートラルカラー
ニュートラルカラーとは、白、グレー、黒などの無彩色や、アイボリー、ベージュ、カーキなど低彩度の自然色などです。これらは、安定感や落ち着きを感じさせる色です。
・くすみカラー
くすみカラーは彩度を抑えた控えめで穏やかな色です。淡く灰色がかったトーンや、ソフトなトーンを中心に、カラーリングが展開されました。安心感、優しさ、上品さを感じさせる色合いです。
・人気の背景
ニュートラルカラーとくすみカラーは、2020年のコロナ禍あたりから徐々に人気が高まりました。感染症の流行で行動が制限されるなど、不安定な状況下で、安心感のある色が好まれるようになりました。
同時に、持続可能性(サステナブル)志向や自然回帰の意識が高まり、自然色も人気を得ました。
2024年~2025年には、インフレや不安定な国際情勢により、安定感のある色、自然を感じさせる色が引き続き高い支持を得ています。
また、高性能テレビ、スマートフォンなどの鮮やかなデジタル色が増す中、刺激の強い色合いに疲れを感じ、彩度が低い穏やかな色合いが選ばれたという面もあるでしょう。
■ ビビッドカラーが注目として加わる
ニュートラルカラーやくすみカラーが定番化し、人気が継続する中で、2025年は彩度が高めの色も注目されました。
・アクセントとしての鮮やかカラー
ファッションやインテリアなどの市場では、赤、コーラル、オレンジなど温かみのある暖色や、自然を感じさせるグリーンが新色、限定色として登場しました。
例えば、スマートフォンの新作モデルでは、低彩度色のバリエーションに加え鮮やかなオレンジなどの高彩度色が登場しました。インテリアでも、北欧系家具ブランドを中心に、鮮やかなグリーン、オレンジのチェアなどが人気となっています。
これらの鮮やかな色は、無彩色や低彩度色に彩りを加えるアクセントとして用いられ、見る人に活力を与える役割を果たしています。
・モカ・ムースとホライゾングリーン
前回の記事では、2025年のトレンドカラーとしてPANTONEのMocha Mousse(モカ・ムース)、JAFCAのホライゾングリーンが提案されたことをご紹介しましたが、この2つも今年の色の傾向に関連しているようです。
Mocha Mousseはくすみカラー人気に、ホライゾングリーンは自然色や鮮やかカラーの人気に一役買っていたのかもしれません。
