2021年8月9日月曜日

ネイルカラーが伝える心模様~映画「わたしたち」

色のトリセツ/「わたしたち」ポスター

ご覧くださって、ありがとうございます。
カラーリスト・色彩講師の 千葉真須美 です。

「色」が大変印象に残った映画「わたしたち」をご紹介します。
この作品は学校でのいじめや家庭の事情を通し、
少女が一歩成長する姿を描いた2016年制作の韓国映画です。



心の動きとリンクするネイルカラー


物語の中でポイントとなるのが、主人公 ソン の爪の色です。
ストーリーと爪の色の変化を、私の下手な絵で申し訳ありませんが、
下の図を使ってお伝えします。

色のトリセツ/映画「わたしたち」説明図

小学4年生のソンはクラスでいじめに遭っています。
夏休み前の終業式の日、ソンは転校生の ジア と出会い、
意気投合した二人は夏の間友情を育みます。

ある日二人は庭に咲いているホウセンカの花の汁で、
爪を赤く染めました。透明感のある美しい赤色です。(図の1番)
上のポスターの画像がそのシーンで、ソン(右側)の奥に
赤いホウセンカの花、ソンの手もとに花の汁がはいったボウルが見えますね。

新学期が始まると、ジアの様子が急によそよそしくなります。
その頃、爪の赤い色は半分に。(図の2番)
実際は爪が伸びた結果ですが、なんとなく友情が半分に
減ってしまった感じがします。

ジアとの仲が険悪になっていく一方で、ソンはいじめっ子の一人が
貸してくれたマットブルーのネイルカラーを、半分赤い爪の上に
重ねます。まるでジアとの友情を否定するかのように。(図の3番)

今度はジアがいじめの標的となり、両者の間で複雑な心境のソン。
ブルーのネイルカラーは所どころ剝げ落ちて、
その下の赤が再び現れてきました。(図の4番)

このように、ソンの心の動きが、そのまま彼女の爪の色に表れていて
赤とブルーといった対照的な色使いや、重ねたり
はげ落ちたりといった表現が素晴らしいと思いました。
爪の色に着目するなんて、少女の物語ならではですね。


ラストの展開にも爪の色が関わっていますが、
これ以上のネタバレは差し控えたいと思います。