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2023年1月19日木曜日

映画「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」|印象に残る茶と青の対比

映画「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」の2種類のビジュアルを並べた画像

ディズニー映画をはじめ何度も映像化されている童話「ピノキオ」が、「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー賞を受賞したギレルモ・デル・トロ監督により、また新たな魅力を持つストップモーション・アニメ映画となりました。

どのシーンも美しく、かつ個性的で、デル・トロ監督独特の美意識に溢れています。その中で、特に印象に残った色彩効果について取り上げます。


■ 同一~類似色相でまとめられた映像

画面を構成する色(色相)の数が絞られていて、全体的に色のまとまりのあるシーンが多く見られました。

上のポスター画像はその良い例で、左側は暖かみのある茶系、右側は冷たいネイビー~黒ブルー系が画面を占め、色のイメージが各シーンの雰囲気を高めています。


■ 暗くくすんだ色調

明度も彩度も高くないトーン、PCCSでいうと、ダルトーン、グレイッシュトーン、ダークトーンが目立ちます。

その結果、かなり個性の強いキャラクターが登場したり、画面の中の情報量が多いような場合でも、全体的に安定感があり、時にはダークな雰囲気を醸し出しています。


■ 青の効果

全体的に橙色のバリエーションである茶系が多い中で、補色にあたる青系の色が効果的に使われています。

例えば、上の2枚のポスターのような現実世界(左・茶系)と死後の世界(右・青系)が場面転換されると、対照的な色使いによりそれぞれの世界観が強調されます。

また、左側のポスターでは茶系のピノッキオと青いクリケット(コオロギ)、右側ではブルー系の世界に茶系のタイトル文字というように、一つの画面の中でもこの二色の対比が活かされています。


■ 色彩に際立ちと変化を与えるライティング

ストップモーション・アニメはセットの中で人形を少しずつ動かして1コマ1コマ撮影します。そのセットや人形を照らすライティングが大変効果的かつ印象的です。

暖かい陽の光、青白い月明り、スポットライトなど、セットや人形の色彩に変化と陰影を与えて、よりドラマティックな世界を作り上げています。

これらの特徴は、明るくカラフルなディズニー版「ピノキオ」と対照的で、比較して見るとその違いがより分かりやすいと思います。

ちなみに、ピノッキオ(ピノキオ)とはイタリアで松ぼっくりのことだそうで、この作品の中にも松ぼっくりが所々に登場しますよ。


■ 関連記事

映画「シェイプ・オブ・ウォーター」|映像のキーカラーはティール




2022年2月5日土曜日

韓国ドラマ「ある日~真実のベール」|青は囚人服の色?

韓国ドラマ「ある日~真実のベール」のワンシーン

韓国ドラマ「ある日~真実のベール」を観ていたら、「青は囚人服の色」というセリフが出てきました。韓国の囚人服は青なので、青い服は「囚人服」を思い起こさせるようです。

このことについて今回初めて知ったので、ちょっとご紹介したいと思います。


■ 青色のシャツは囚人服を連想させる

このドラマはキム・スヒョンさん演じる平凡な大学生ヒョンスが、軽率な行動をとったことが原因で殺人犯として逮捕され、少々頼りない弁護士(チャ・スンウォンさん)の助けを得ながら、圧倒的に不利な裁判で無実を訴え続けるというストーリーです。

第5話、初めて法廷に立つ日、スヒョンは母親が用意したライトブルーのシャツを身に付けて裁判に臨もうとします。その姿を見た弁護士は「そのシャツはなんだ…」とため息をつき、自分が着ている白いシャツと取り換えるようヒョンスに指示します。

その理由が「青は囚人服の色だ」というもの。

ドラマに登場する囚人服は明るいデニム素材のようなブルーで、ちょうど上の画像右側のトレーナーのような色です。(この写真は拘置所内のシーンで、まだ囚人服ではありません。)

これから無罪を訴えようとする被告人が、囚人のような色の服でマイナスイメージを与えないための、見た目へ配慮でした。

また、取り換えて着用した白いシャツは明るく清潔感があり、陪審員にクリーンなイメージを与えることができます。シャツカラーからも潔白であることを示す作戦です。


■ 心境の変化を表すシャツのカラー

*ここからは少々ネタバレですので、ご注意ください。

自分の主張が全く認められず追い詰められていくヒョンスは絶望し、裁判の席でも暗い表情で投げやりな態度をとります。その時に着ているのが黒いシャツです。この黒がヒョンスの心の中をよく表しています。

同時に彼の見た目の印象も悪化させています。黒は悪や罪をイメージさせる色で、日本でも有罪であることを示すときに「あいつはクロだ」なんて言ったりしますね。

青、白、黒、この3色のシャツカラーによって、主人公の立場や心理状況が見ている人に感覚的にも伝わるよう工夫された作品であると感じました。




2021年8月9日月曜日

映画「わたしたち」|ネイルカラーが伝える心模様

映画「わたしたち」のポスターの画像

「色」が大変印象深い映画「わたしたち」をご紹介します。

この作品は学校でのいじめや家庭の事情を通し、少女が一歩成長する姿を描いた2016年制作の韓国映画です。


■ 心の動きとリンクするネイルカラー

(※少々ネタばれがありますので、ご注意ください。)

物語の中でポイントとなるのが、主人公ソンの爪の色です。

ストーリーと爪の色の変化を、私の下手な絵で申し訳ありませんが、下の図を使ってお伝えします。


映画「わたしたち」でネイルの変化を紹介する図

小学4年生のソンはクラスでいじめに遭っています。夏休み前の終業式の日、ソンは転校生のジアと出会い、意気投合した二人は夏の間友情を育みます。

ある日二人は庭に咲いているホウセンカの花の汁で、爪を赤く染めました。透明感のある美しい赤色です。(図の1番)上のポスターの画像がそのシーンで、ソン(右側)の奥に赤いホウセンカの花、ソンの手もとに花の汁がはいったボウルが見えています。

新学期が始まると、ジアの様子が急によそよそしくなります。その頃、爪の赤い色は半分に。(図の2番)実際は爪が伸びた結果ですが、なんとなく友情が半分に減ってしまったイメージです。

ジアとの仲が険悪になっていく一方で、ソンはいじめっ子の一人が貸してくれたマットブルーのネイルカラーを、半分赤い爪の上に重ねます。まるでジアとの友情を否定するかのように。(図の3番)

今度はジアがいじめの標的となり、両者の間で複雑な心境のソン。ブルーのネイルカラーは所どころ剝げ落ちて、その下の赤が再び現れてきました。(図の4番)

このように、ソンの心の動きが、そのまま彼女の爪の色に表れていて赤とブルーといった対照的な色使いや、重ねたりはげ落ちたりといった表現が素晴らしいと思いました。

爪の色にストーリーを重ねるなんて、少女の物語ならではですね。

ラストの展開にも爪の色が関わっていますが、これ以上のネタバレは差し控えたいと思います。作品でご確認くださいね。




2021年4月29日木曜日

映画「シャイニング」|恐怖を高める色彩演出

映画「シャイニング」に登場するホテルのカーペットの柄

上の画像を見てピンと来た方は、かなりの映画通のはずです!

これは、ホラー映画の傑作「シャイニング」に登場するホテルのカーペットの柄です。かなりインパクトのあるデザインですよね。

私はホラーやスプラッタが苦手で、この作品はポスターを見ただけで「絶対無理!」と思っていましたが、ついに先日勇気を出して観てみました。


映画「シャイニング」のポスター画像

■ この色使いに注目!

(※少々ネタばれがありますので、ご注意ください。)

覚悟していた通りかなり怖かったのですが、私としては怖さよりも次のような色使いの方が印象的でした。

・この物語は冬期閉鎖中の山岳リゾートホテルが舞台です。オープニングで映し出されるホテルの全景は外壁がミディアムグレーで、山肌に溶け込む色合いですが、リゾートホテルとしては少々陰気な感じがします。

・館内はカントリー調の比較的落ち着いた内装です。しかし物語が進行し、主人公の幼い息子が三輪車で廊下を走り回るシーンで画像の柄のカーペットが登場します。

・この柄の不思議な幾何学模様とエスニックな色調が、何とも言えない不気味さで、まるで違う世界への橋渡しをしているようです。物語もこのあたりから、だんだん異様な雰囲気に…。

・女性の幽霊と遭遇する部屋はパープルとライトグリーンのインテリアに、ライトグリーンのバスルームで、他の内装と明らかに違和感のあるカラーリングです。

・そして、真っ赤なトイレのシーンでは、刺激的な色彩が緊張感と恐怖感を高めています。

名作はさすがに色使いも素晴らしい!

まだご覧になっていない方はもちろん、既にご覧になった方にも色彩効果からの視点での鑑賞をお薦めしたい作品です。




2021年2月3日水曜日

映画「今夜、ロマンス劇場で」|色へのこだわりが光る映像演出

「今夜、ロマンス劇場で」映画のチラシと原作本の表紙
(左)映画チラシ (右)原作本

今日は色への強いこだわりを感じる2018年公開の映画「今夜、ロマンス劇場で」を取り上げます。

プレゼントされた原作本をきっかけに映画も観てみたら、色彩の見どころが満載の作品でした。色に興味をお持ちの方には、ぜひご覧になっていただきたい作品です。


■ 色使いの注目ポイント

・映像全体の3つの色調

ストーリーは次の3つの色調で描かれています。

 ①モノクローム(ヒロインが登場する白黒映画の世界)
 ②ナチュラルで少々あっさりした色調(現在、年老いた主人公の入院生活)
 ③鮮やかでカラフルな色調(1960年、主人公の青春時代)

特にメインとなる③のシーンの鮮やかさは印象的です。

この時代、日本は高度成長期真っ只。1950年代にカラー映画製作が本格化、1960年はカラーテレビ本放送開始、百貨店がカラーキャンペーン展開と、カラー化が進んだ時代で、その活力や主人公の情熱、若いエネルギーが色彩からグイグイと伝わってきます。


・各シーンに見る細やかな色の工夫

例えば…
 ・現在の入院シーンでは、ブルー系のファブリックで寂しさを演出
 ・二人が出会う「ロマンス劇場」は思い切りカラフルに
 ・ドロップ(キャンディー)は実物より濃い色でカラフルさを強調
 ・カラフルなかき氷(ブルーのシロップは80年代以降では?)
 ・赤いダルマ、花笠、自動車など、画面にアクセントカラーを配置 など。

これはほんの一部分で、見れば見るほど新たな色の発見がありそうです。


・ヒロインのファッションカラー

彩瀬はるかさん演じるヒロインの数十種類以上に及ぶファッションは、モノトーンからビビッドカラーまで色とりどりです。背景カラーとのコンビネーションも考慮されています。

…ということで、ストーリー展開に合わせた色彩の演出をお楽しみください。もちろん、色の勉強にもなるはずです!




2020年2月6日木曜日

映画「ジョジョ・ラビット」|物語を彩る色の魅力

先日、映画「ジョジョ・ラビット」を観て来ました。ジョジョと言っても「奇妙な」ジョジョではありません。第二次世界大戦下のドイツに暮らす10歳の少年の物語です。

イマジナリーフレンド(空想上の友人)はヒトラーというちょっと変わった少年ジョジョの成長を、個性的なキャラクターやブラックユーモアを交えながらも温かく描いた作品です。

この作品は内容の良さに加え、色彩も魅力的です。


■ 作品の世界観を伝える色彩

・優しい色合いの街並み

まず目を引くのは舞台となる小さな町の美しい街並み。「どこか見覚えが…。」と思ったら、ロケ地は以前に旅したチェコでした。(下の画像はチェコのチェスキークルムロフで撮影)


チェコのチェスキークルムロフの広場の写真
photo by Masumi Chiba

画面に映し出される淡いピンクやイエローで彩られた中世的な街並みは、それだけでどこかファンタジックな雰囲気が漂います。さらにアールデコのインテリア、ファッションも素敵で、目立ちはしないけれど存在感のある色調です。ふと「グランド・ブダペスト・ホテル」を連想しましたが、こちらの方がシックです。


・緑色に成長するイメージを重ねて

このような色彩の中で私が最も注目したのはグリーンです。

ジョジョが訪れたキャンプ場の緑、母親役を演じたスカーレット・ヨハンソンのファッション、母子で自転車散歩するシーンの草の色、家のドア、インテリア等々。

画面の中の草木のグリーンは、太陽の光を浴びてきらきらと輝き、若々しい生命感を感じさせます。

インテリアやファッションのグリーンは、画面全体のアクセントとなるか、赤系の色の補色としてお互いの色を引き立てています。

私にはこれらのグリーンが、一歩大人に近づいたジョジョの成長を象徴しているように感じられました。

また、ネタバレになるので詳しくご説明しませんが、ストーリーの展開と共に画面の色彩、特に街並みの色合いが変化します。どのように色調が変化し、それらがどんな印象を与えているか、映画をご覧になる際は是非注目してください。




2019年7月8日月曜日

映画「新聞記者」|画面で目を引く赤が伝えること

映画「新聞記者」、ポスターの画像

久しぶりに日本映画を観に行きました。話題作「新聞記者」です。

政府の極秘情報を突き止めようとする女性新聞記者と、元上司の自殺の背景を探る内調(内閣情報調査室)の官僚が主人公の物語です。


■ 画面で目を引く「赤」が伝えること

・赤に込められた意図を考える

この作品で印象的だったのはシム・ウンギョンさん(上の画像の左側)が演じる女性記者が身に付けていたニットやマフラーの赤い色です。

ポスターやチラシでは暗い色合いですが、画面で見ると、派手でも地味でもない可愛い赤でした。この赤が、黒やグレーの多いオフィス、グレイッシュな冬の街並み、あるいはスーツ姿の男性たちの中で目を引きます。

「目を引く」ということは、きっと何らかの意図があって選ばれた色に違いありません。


・純粋な姿を強調

では、なぜこの赤が使われたのでしょう?

女性らしさをアピール? それとも、仕事にかける熱意・情熱の象徴?

私が感じたのは「純粋さ」です。

先ほど「可愛い赤」と書いた通り、私の目には新聞記者としてバリバリ仕事している女性にしては、なんとなく少女っぽい赤に感じられました。そのため、真相究明へと突き進む彼女の姿に、純粋で真っ直ぐなイメージが加わって見えました。

一方、松坂桃李さん演ずる内調の官僚は、職務に疑問を持ちながらも、家族や自分の立場を案じ思い悩みます。

真っ直ぐな彼女と、苦悩する彼。二人の対照的な姿が「赤」によって強調されていたように感じました。

この赤、あなたの目にはどう映るでしょうか?ぜひ映画でお確かめください。




2019年4月28日日曜日

韓国ドラマ「あなたが寝ている間に」|色覚の多様性が描かれた印象的なシーン

色の見え方の多様性を表す色相環の画像
アプリ「色のシミュレータ」を使用

先日、韓国ドラマ「あなたが寝ている間に」を見ていたら、色の見え方に関するエピソードが登場しました。これがかなり良い内容だと思ったので、ご紹介します。ただしネタバレとなりますのでご注意ください。


■ 色の見え方は人によって違う


韓国ドラマ「あなたが寝ている間に」メインビジュアル
韓国ドラマ「あなたが寝ている間に」

・裁判で語られた「赤と緑」の見え方

物語終盤の裁判シーンで、チョン・へインさん演ずる警官が事件の証人として出廷します。

彼は現場で目撃した2本の傘についてそれぞれの色を尋ねられますが、答えることができません。なぜなら、2本の傘の色は赤と緑で、彼はこの2色を見分けにくい色覚を持っていたからです。

色覚(色の見え方)には個性があります。そのため、自分に見えているその色が、他の人にも同じ色に見えているとは限りません。

中には赤と緑の見分けが困難なタイプもあります。昔は「色盲」「色弱」、数年前までは「色覚異常」と呼ばれた見え方で、現在は「色覚多様性」と表現されています。

この見え方を スマートフォン・アプリ「色のシミュレータ」で再現したのが一番上の画像です。このように左側の色相環の12色が右側のように見えるタイプの方の場合は、確かに赤と緑の見分けが難しそうです。


・「分からない」のではなく、見え方が違うだけ

話はドラマのストーリーに戻ります。

「私は色を識別できません。」そう告白した証人に、「では、あの日に見た傘を描写できますか?」と検事は質問を続けます。

ここで弁護士は、「裁判長、普通の人でも夜間に一瞬見ただけの傘を記憶するのは難しい。ましてや色の分からない証人が…」と証人の証言の信憑性を否定しようとしますが、その言葉を遮って彼はこう主張します。

「分からないのではなく、普通の人と見え方が違うだけです。明暗には敏感なので、夜間の識別には自信があります。… (傘の形態を描写し)長い傘は被告人のネクタイに似た色、折り畳みの傘は検事さんの法服のラインより鮮明な色です。」

この色の説明は、赤と緑の傘を見事に表現していました。

彼が自分の見え方をきちんと説明していること、自分が見ている色の中で傘の色をしっかりと表現したことに、深く感心・感動しました。色覚についてここまで語られたドラマは初めてです。

日本では男性の約5%、女性の0.2%の方がこのタイプの見え方であると言われています。ドラマのエピソードを通して多くの方々の色覚への理解が深まることを願っています。


*色覚の多様性についてもう少し詳しく知りたい方はこちら*
「色のふしぎ」と不思議な社会」|色覚の多様性を知るために
新版「「色のふしぎ」と不思議な社会」|色覚の多様性を知り、社会のこれからを考える




2019年3月3日日曜日

映画「彼が愛したケーキ職人」|エスニックな香りの三色配色

映画「彼が愛したケーキ職人」のポスター

今回は映画「彼が愛したケーキ職人」をご紹介します。

上の画像は日本公開用のポスターです。ベースカラーがパンや焼き菓子を連想させる美味しそうな色ですよね。私はフランスかベルギーあたりが舞台のちょっとロマンチックな大人のラブストーリーかな?と想像していました。

ところが、主な舞台は中東のイスラエル。内容はちょっと悲しいしみじみとした物語で、ポスターの配色から受けるイメージとは少々違う作品でした。


■ 中東の街を彩るエスニックカラー

この映画で印象的だったのが街並み、インテリア、ファッションに見られたターコイズブルー・白・レンガ色です。


ターコイズブルー・白・レンガ色のエスニックな3色

例えば、街並みを映し出した時のレンガ色の屋根、白い壁、ターコイズブルーの窓枠。画像のポスター中央の写真にも レンガ色と白の壁と、女性が着ているターコイズブルーに近い色のインナーが見られます。

ターコイズブルーはトルコ石(ターコイズ)の色、レンガ色は赤土の色で、この二色の組み合わせからはエスニックなイメージが得られます。そこに明るい白が加わった三色配色です。

この配色、これに似た組み合わせのイタリア国旗の三色、フランス国旗の三色と比べてみるとどうでしょう?


イタリア国旗とフランス国旗が並んだ画像

こちらのカジュアルさ、スポーティーさに比べて、やはりどこか民族的な雰囲気を感じますね。

きっとイスラエルらしい三色配色なのであろうと感じました。




2019年2月17日日曜日

映画「女王陛下のお気に入り」|白と黒で描かれた世界

映画「女王陛下のお気に入り」ポスター


第91回アカデミー賞で作品賞、主演・助演女優賞、衣装デザイン賞、美術賞など9部門でノミネートされた映画「女王陛下のお気に入り」を観に行きました。

ストーリーはもちろんのこと、18世紀初頭のイングランドの宮廷が舞台ということで、ファッションやインテリアも大変楽しみにしていた作品です。


■ モノトーンと光と影

主な登場人物は女王と、女王の側近である侯爵夫人、そして女王の寵愛を勝ち得ようとする侍女の3人の女性です。

色彩豊かな豪華な衣装の数々を想像していたら、3人の衣装は白と黒のモノトーンばかり。とても意外でした。

しかし、色数が限られていることで布地の質感、レースやリボン、ギャザーといった装飾の繊細さがよく伝わっています。中でも 光を受けた部分にだけ現れる黒いドレスの見事な織り柄が、なんともゴージャスで美しかったです。

そして、白と黒という配色から洗練されたスタイリッシュな感覚と共に、女王の孤独や冷たい人間関係なども表現されていたように思います。

また、議会のシーンでは、2つの派閥が赤い衣装と青い衣装に分けられていて、両者の対立関係が明確になっていた点にも目が引かれました。

室内装飾は豪華ながらも彩度を抑えた重厚な色調です。窓から差し込む光と影の部分の明暗が強調されて、ここでも白と黒のイメージを感じました。

ストーリーにも、一見華やかに見える宮廷とその裏に潜む野望や陰謀、宮廷の贅沢な暮らしやフランスとの戦争とその陰で重い税を課せられ生活に苦しむ国民という、光と影の図式が描かれています。

白と黒、光と影の印象が強く残った作品でした。




2018年6月17日日曜日

映画「万引き家族」|心に残った、ある色

映画「万引き家族」のポスター

第71回カンヌ映画祭でグランプリに輝いた話題作「万引き家族」を観ました。

「ほんとうの家族とは?」と、家族について考えさせられる余韻の深い作品でした。

この作品で大変心に残った色があります。今回はその色のお話ですが、ネタバレになりますので、これからご覧になる方はご注意ください。


■ 心に残る黄色

「万引き家族」で私の印象に強く残った色は黄色です。

一つはとうもろこしの黄色、もう一つは水着の黄色です。

冬の寒空の下、家から閉め出されてしまった5歳の女の子を、ある家族が保護します。一家は、暴力を受けた跡が残るその子を家に返すことができず、一緒に暮らすことに…。

少女が心を開き始め、家族の一員らしくなってきたある夏の晩、一家は大きな鍋で茹でたトウモロコシを食べながら、ごくありきたりの楽しいひと時を過ごします。

また、ある日少女は黄色いワンピースの水着を買ってもらいます。嬉しさのあまり、お風呂に入るのにも水着を着る少女。この水着を持って家族全員で出かけた海水浴が、一家の最後の楽しい思い出となりました。

黄色から受けるイメージは、無邪気さ、明さ、楽しさ、元気 などです。

家族団らんのトウモロコシの色、家族で海へ行った時の水着の色、これらの黄色が少女の、そして一家の幸せなひと時を象徴すると同時に、映像に光を与えているように感じました。




2018年5月14日月曜日

映画「しあわせの絵の具」|しあわせな気持ちになれる色彩

映画「しあわせの絵の具」のポスター

「人生は、美しい色であふれている。」
このキャッチコピーに惹かれ、映画「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」を観てきました。


■ 陽の光を感じる暖かな色彩

主人公は「カナダで最も有名な画家」と呼ばれるモード・ルイス という女性です。若年性リウマチのため手足が不自由ながらも、夫と二人、小さな家で質素に暮らしながら絵を描き続けることが彼女の幸せです。

「うちの息子でも描ける」と雑貨屋の主人に言われてしまう彼女の絵は、どれも明るいトーンで伸びやかに描かれています。

絵画は「写実的=上手」と捉えがちですが、彼女のように自分の世界を持っていることは、誰にも真似できない上手さなのだと思います。

真っ白な猫、真っ黒な猫、赤い屋根、色とりどりの花々…。彼女の作品を見ていると、カラフルな色彩に暖かい陽の光を感じ、開放的で心地良い気分になります。部屋に一枚欲しい!と思いました。

また、映画を観ていて、映像全体の色のトーンを抑えていると感じました。

グレイッシュで静けさを漂わせる風景は、二人の素朴な生活感を伝え、同時に彼女の作品世界をより鮮やかに見せています。

美しい風景と作品の数々を目にしながら、幸せな気持ちになれる素敵な作品でした。




2018年3月6日火曜日

映画「シェイプ・オブ・ウォーター」|映像のキーカラーはティール

映画「シェイプ・オブ・ウォーター」ポスターの画像

今回は、第90回アカデミー賞授賞式で作品賞、監督賞、美術賞、作曲賞の4部門での受賞を果たした「シェイプ・オブ・ウォーター」を取り上げます。

この作品は少々グロテスクなシーンもあり、苦手な方もいらっしゃるかもしれませんが、私は美しい映像・美しい音楽で描かれた大人のおとぎ話だと感じました。

映像でポイントになっている色は「ティール」です。


■ ティール(Teal):青緑色

この作品のキーカラー「ティール(Teal)」は、上のポスター画像の中央部分の青緑です。

Teal とは、もともと小さい鴨のことで、この鴨の羽に見られる青緑も Teal と呼ばれています。

日本の伝統色にも「鴨の羽色(かものはいろ)」という色がありますが、ティールより若干暗めの色です。

作品の中で物語の舞台となる研究施設や主役の女性の衣装、そして捕らわれた生物(彼)の身体にもティールのバリエーションカラーが用いられ、海の中を思わせる映像世界を作り上げています。

おまけに、彼を殺そうとする悪役が購入した高級車のボディカラーもティール。

「緑でしょ!?」
「いえ、”ティール” です!」
というギャグのようなやり取りも含まれていました。

また、ラストの女性の衣装などに見られる赤が、緑系の中でアクセントカラーとなり、色の印象を深めています。ポスターにも同様の効果が見られますね。

この作品の効果で「ティール」という色名が広く定着するかもしれません。




2017年9月25日月曜日

映画「ブレンダンとケルズの秘密」|ケルト文様と色彩美に圧倒される

映画「ブレンダンとケルズの秘密」のちらし


楽しみにしていたアニメ映画「ブレンダンとケルズの秘密」を観てきました。

この作品は、アイルランドの国宝であり、「世界で最も美しい本」と言われている「ケルズの書」が完成するまでの物語です。


■ ケルト文様と色彩美に圧倒される

・多彩で巧みな色彩表現

とにかく映像が美しい画面のあちこちにケルト文様がちりばめられ、とても幻想的な世界を作り上げています。

色彩も素晴らしく、明るく鮮やかな色調から深い色調、渋い色調と、多彩なカラーバリエーションで描かれています。

さらに季節の移り変わりや、太陽・月・炎による光の演出、心のふれあいや恐怖など感情を伝える表現まで、色使いが大変巧みでした。

日本のアニメーションも美しいけれど、海外の作品はまた違った個性の美しさですね。この作品を観て、「眼福」とはまさにこのことだと感じました。


・アイルランドを象徴する緑色

ところで、この作品は緑色がキーカラーです。映像では美しい緑色が印象的ですし、ストーリー上でも主人公の少年が緑のインクの原料となる木の実を探しに森へ出かけるところから大きく展開していきます。

緑はアイルランドのシンボルカラーです。アイルランドの祝日セント・パトリックデー(3月17日)では街中が緑色で飾られ、人々は緑色の服を身に着けます。

緑色を多用した点にもアイルランドへの愛を感じる作品でした。




2017年8月14日月曜日

韓国ドラマ「夜を歩く士(ソンビ)」|黒は吸血鬼を守る

夜のノートルダム寺院の写真
Photo by Masumi Chiba

最近見始めた韓国ドラマ「夜を歩く士(ソンビ)」では、黒を上手に使っていると感じたので、ご紹介したいと思います。


■ 黒の機能とイメージを活用

このドラマは時代劇で、吸血鬼:ヴァンパイアのお話です。

国王を影で操る悪の吸血鬼に対抗する良い吸血鬼が、自分の力をある高貴な青年(主人公)に託します。不本意にも吸血鬼にされてしまった青年ですが、長い時を超えて友人の仇でもある悪の吸血鬼を倒そうとするお話です。

青年が吸血鬼となったとき、師匠的存在の良い吸血鬼はこのようなアドバイスをします。「身を守るために、黒い衣は絶対に脱いではいけない。」

考えてみると、一般的に吸血鬼は太陽の光を浴びると死んでしまいます。そのため、ドラキュラ伯爵は昼間は棺桶の中で眠り、夜になってから行動していました。

しかし、夜しか行動できないとなると、物語がなかなか進みません。そこで、「黒い衣」が登場したのだと思います。

黒は色の中で光を最も吸収する色です。黒い衣を身につけていれば、黒が太陽光を吸収してくれるので、吸血鬼でも昼間に行動できる、そんな設定にしたのではないかと…。


韓国ドラマ 「夜を歩く士(ソンビ)」イメージ画像

また、黒にはどこか謎めいた雰囲気や、ダークなイメージがあります。同時に高級感や洗練されたイメージもあるので、この「身分の高い青年吸血鬼」という設定にはピッタリ!

ということで、このドラマでは黒という色の機能とイメージの両方を上手く活かしていると思います。