2021年2月21日日曜日

色覚異常とは?多くの方に読んでいただきたい「色の見え方」に関する本 「「色のふしぎ」と不思議な社会 2020年代の「色覚」言論」

 

色のトリセツ
「「色のふしぎ」と不思議な社会」(インデックスや付箋は私が貼りました)

ご覧くださって、ありがとうございます。
カラーリスト・色彩講師の 千葉真須美 です。

長いこと色彩講師をしていますが、
この本を読んで目からウロコが何枚も落ちました。


「「色のふしぎ」と不思議な社会 2020年代の「色覚」言論」

 川端裕人 著 (筑摩書房)


色覚(色の見え方)が正常か、それとも異常か、
-このようにいうと、2者の境界が明確であるように感じます。
「異常」とされた人は「正常」な人と全く違う世界を
見ているのではないかと…。

しかし、実際は「正常」から「異常」へ色覚の差異は
なだらかに変化してくため、両者はきっちりと分かれおらず
線引きは大変難しい。この現実に大変驚きました。

「異常」にごく近い「正常」者もいれば、
「正常」にごく近い「異常」者もいる。
それほど色の見え方には多様性がある。

色覚には個人差があること、加齢により色覚が変化することなど、
色覚の多様性についてはある程度理解しているつもりでしたが、
それを超える内容がいくつも紹介されていました。

先天色覚異常とは何かにはじまり、先天色覚異常と診断された
人々を取り巻く社会とその人たちの声、色覚の進化、
色覚のメカニズム、現在の色覚検査など多岐にわたる
視点から色覚について述べられています。

色覚によって、進学や職業選択が制限されることがあります。
また、各種標示や公共スペースなどの配色はどうあるべきかなど、
色覚の多様性は私たちの生活に大きく関与しています。

色に関心のある方だけでなく、あらゆる方にお読みいただき、
色の見え方への関心・理解を深めていただければと思います。

【関連記事】

韓国ドラマ「あなたが寝ている間に」で描かれた色覚の多様性





2021年2月8日月曜日

大人の塗り絵/配色のアイディア ~ エスニックカラーで



大人のぬり絵 千葉真須美
color by Masumi Chiba

ご覧くださって、ありがとうございます。
カラーリスト・色彩講師の 千葉真須美 です。
韓国の塗り絵「시와 소녀」(詩と少女)の中から
1枚の塗り絵を仕上げましたので、その配色のアイディアと
完成までの過程をご紹介します。

選んだ線画は上の写真左側の女性の絵です。
民族衣装的なファッションや、ペーズリーに似た背景の模様から
頭に浮かんだのはエスニックカラーでした。


エスニックカラーで色を構成


エスニックカラーとはキリスト教圏以外の民族調の色彩で、
上の写真右側のようなスパイシーカラー(香辛料の色)や、
土着をイメージする色、黒、ターコイズなどです。
色調はディープトーン、ダルトーンが中心。
(色彩検定では、2級テキスト「ファッション」のページで
取り上げられています。)

配色のメインは面積が最も大きい女性のショールです。
そこで、はじめにメインカラーを朱色に決定。
続いて、インナーは朱色と対照的なグリーン系に。
背景は朱色となじみの良い類似色の黄土色を主にし、
人物より目立つことのないようトーンを抑えることにしました。


ぬり絵を塗る順番は…


大人のぬり絵 千葉真須美
先に背景を

私の場合ですが、
背景から塗ることが多いです。
最初に主役に色を乗せてしまうと、
その後他の部分を塗る間に
色鉛筆の粉が取れてぼやけてしまう
ことがあるからです。









大人のぬり絵 千葉真須美
次に主役部分へ

しかし、主役から塗る方が、
全体の色の調節がしやすいので、
ぬり絵を始めたばかりの方には
主役 → 背景 という順番を
おすすめしています。










全体を塗り終えたら、最後に全体をチェック。
塗り忘れは無いか? もう少し色を足した方が良いところは無いか?
など、確認をしてみてOKなら完成です。

ここは違う色にすればよかった・・・などと思うこともありますが、
後からいじり過ぎるとかえって取り返しのつかないことになる
場合もありますので、反省点は次に活かすことにしましょう!


大人のぬり絵 千葉真須美
こちらが完成版



















2021年2月3日水曜日

色好きさんは必見!彩り溢れる映画「今夜、ロマンス劇場で」

(左)映画チラシ (右)原作本

ご覧くださって、ありがとうございます。
カラーリスト・色彩講師の千葉真須美です。

今日は色に強くこだわっている 2018年公開の映画
「今夜、ロマンス劇場で」を取り上げます。

読書仲間からいただいた原作本をきっかけにNetflixで観たら、
色彩の見どころが満載の作品!色に興味をお持ちの方には
ぜひともご覧になっていただきたい作品です。


「今夜、ロマンス劇場で」色使いの注目ポイント


【1】映像全体の3つの色調(カラートーン)

ストーリーは次の3つの色調で描かれています。

 1 モノクローム(ヒロインが登場する白黒映画の世界)
 2 ナチュラルで少々あっさりした色調
         (現在、年老いた主人公の入院生活)
 3 鮮やかでカラフルな色調(1960年、主人公の青春時代)

特にメインとなる1960年のシーンの鮮やかさは印象的です。
この時代、日本は高度成長期真っ只。1950年代にカラー映画製作が本格化、
1960年はカラーテレビ本放送開始、百貨店がカラーキャンペーン展開と、
カラー化が進んだ時代で、その活力や主人公の情熱、若いエネルギーが
色彩からグイグイ伝わってきます。


【2】各シーンに見る細やかな色の工夫

例えば…

 ・現在の入院シーンでは、ブルー系のファブリックで寂しさを演出
 ・二人が出会う「ロマンス劇場」は思い切りカラフルに
 ・ドロップ(キャンディー)は実物より濃い色でカラフルさを強調
 ・カラフルなかき氷(ブルーのシロップは80年代以降では?)
 ・赤いダルマ、花笠、自動車など、画面にアクセントカラーを配置

ーなど、これはほんの一部分で、
見れば見るほど新たな色の発見がありそうです。


【3】ヒロインのファッションカラー

彩瀬はるかさん演じるヒロインの数十種類以上に及ぶファッションは
モノトーンからビビッドカラーまで色とりどりです。
背景カラーとのコンビネーションも考慮されています。

-ということで、ストーリーはもちろんですが、
特に色に注目して作品をご覧になってみてください。
色の良い勉強にもなりますよ。👌