2019年3月24日日曜日

伊丹十三さんの色彩感覚に驚いた「ヨーロッパ退屈日記」

伊丹十三さんご自身が表紙をデザインした「ヨーロッパ退屈日記」


ご覧下さってありがとうございます。
色彩講師・カラーリストの 千葉真須美です。

最近読んだ 伊丹十三さんのエッセイ「ヨーロッパ退屈日記」
1ページ目から衝撃でした。そこにはこんな表現が…。

『彼は、サモン・ピンクの皮膚に藁(わら)色の髪をした、
 雀斑(そばかす)の多い青年で、鶯の糞の色の背広、
 血膿(ちうみ)色のネクタイ、それにブルーの方眼のシャツを着ていた…』

前々回の記事
「カラーセンス(色彩力)を磨く!その4~慣用色名に強くなる」
慣用色名について取り上げました。
この文章の「サモン・ピンク」「藁色」という色名は
慣用色名として用いられている色の名前ですね。

しかし「鶯の糞の色」「血膿(ちうみ)色」はどうでしょう?
私はこれらの表現を初めて見ました。

鶯の糞は、美肌効果があると江戸時代から
化粧品の原料として用いられていて、
色は淡いグレイッシュなグリーンです。
血膿は血の混じった膿のことで、
濁った深い赤といったところでしょうか。

どちらも美しい表現とは言い難く、著者がその色に対して
好感を持っていなかった様子がうかがわれます。
それにしても、このような表現をサラリと用いるなんて凄い!

伊丹十三さんは
役者から映画監督になった方という印象が強いのですが、
じつはデザイナーでもあり、この作品の中では
色に対する繊細さやこだわりが強く感じられます。

カクテルについて綴られた章では

『わたくしは、彼女の、その日の気分や、好み、アルコール許容度、
 そして服装の色などをおもんぱかって、これ以外なし、という
 カクテルをピタリと注文する悦びは、男の愉しみとして
 かなりのものと考えるのだが、いかがなものであろうか。』

と述べています。
服の色に合う色のカクテルを選ぶなんて、
いかに 色、ビジュアルを大切にしていたかが解りますね。

ファッションだけでなく、食や街並みについても
伊丹さんは繊細かつ明確な美意識を持っていて、
このエッセイが今から50年以上も前の時代(1965年)に
書かれたとは信じられません。

巻末の関川夏央さんによる解説では、

『伊丹十三は言葉と文字を気にする人だった。…
 赤いのアカを、赤い、朱い、紅い、赫い、丹い、緋いと
 使い分けないと気分が「淪(しず)」んだ。』

とあり、伊丹さんの凄さをダメ押しされました。

驚きと共に
カラーリストとして刺激を受けた一冊でした。



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