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色を楽しみたい方に向けて、姉妹ブログの「IROKORO」で本のご紹介をしていますが、この小説については、色を学んでいる方におすすめしたいと思い、こちらのブログで取り上げました。なんと、江戸時代のカラーコーディネーターのお話です。
作品情報
・タイトル:江戸彩り見立て帖 色にいでにけり
・著 者:坂井 希久子
(あらすじ)
お彩の父親は腕のいい摺師でしたが、火事で視力も、仕事場も失ってしまいます。
盲いた父の面倒を見ながら貧乏長屋で暮らしているお彩。
婚約者との縁談も流れ、粗末な木綿の着物に身を包んでいますが、お彩には、天性の鋭い色彩感覚があるのでした。(amazonより)
この本のおすすめポイント
舞台は江戸後期。ちょうど大河ドラマ「べらぼう」の少し後でしょうか。浮世絵や歌舞伎が人気の町人文化全盛の時代です。色彩感覚に優れたお彩が、彼女に持ち込まれた色に関する難題に取り組んでいく姿は、まさに「江戸のカラーコーディネーター」です。
この物語を読んで、私が特におすすめしたいポイントは次の3つです。
・伝統色名がふんだんに使われている
・色の知識がどんなところで必要とされるかがわかる
・色を選ぶ際の視点が描かれている
それぞれの点について、もう少し詳しくご紹介します。
四十八茶百鼠、役者色など伝統色が楽しめる
最初の数ページだけでも、伝統色名が次々と登場します。鳶色(とびいろ)、藍鼠(あいねず)、紺青(こんじょう)、瑠璃(るり)、瓶覗(かめのぞき)…と、大変豊富です。一色、一色、どんな色かを思い浮かべながら読む楽しみがあります。
江戸時代の色彩を代表する「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねず)」、「役者色(やくしゃいろ)」もストーリーの中で語られると、色彩用語として学ぶのと違って、より身近に感じられます。
*四十八茶百鼠
庶民の間で流行した茶色と鼠色のバリエーションの多彩さを表したことば
*役者色
團十郎茶(だんじゅうろうちゃ)、路考茶(ろこうちゃ)など、歌舞伎の人気役者に因んだ色
色が役立つ場面と、色選びの視点
お彩への依頼は、和菓子の色、着物の色など、こういう場面で色の知識が必要とされるという例として捉えることができます。
また、これらの依頼について色を提案する過程で、お彩がどんな点をポイントにして色を選ぶのかが、まさにカラーコーディネーター視点です。例えば着物の色なら、その人に似合うだけでなく、他の要素も考慮する。これを具体的に解説するとネタバレになってしまうので、詳細はぜひ本書でご確認いただければと思います。物語自体もとても面白いので、ぜひお楽しみください!
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