2019年2月3日日曜日

「すべての、白いものたちの」|異なる「白」で構成された美しい一冊


ハン・ガン著「すべての、白いものたちの」異なる白で構成された書籍の用紙
photo by Masumi Chiba

書店に並ぶ本の中に「色」という文字、あるいは色の名前を見つけると、単行本でも雑誌でも思わず手に取ってしまいます。そして「ジャケ買い」ならぬ「タイトル買い」をすることも…。


■ タイトルに惹かれ、装丁に驚く

ハン・ガンさんの短編集「すべての、白いものたちの」もタイトルに惹かれて手を伸ばしたら、ビックリ!この本には、5色の紙が使用されていました。このような作りの本は初めてです。

どの色もごく淡いトーンで、画像のように並ぶと色の違いがハッキリと判りますが、1色だけで見たら「白」と捉えそうな色ばかりです。

そして、こんなに微妙な違いの色でも、ページをめくって色が切り替わる瞬間は、まるで世界が変わるような新鮮な感覚でした。


■ 白の世界が広がる

うぶぎ、ゆき、白い犬、戦争で廃墟となった街など、本文に綴られたさまざまな白いものたちと、かすかに表情の違う 5つの白いページ。色の効果で白の世界がますます広がります。

白いものは数あれど同じ白は一つも無い、そんなことを伝えているようにも感じました。

静かに心に沁みてくる作品の数々と美しい装丁。ずっと大切に持っていたい一冊です。

*装丁:佐々木暁さん