2025年10月3日金曜日

【本の紹介】知っておきたい色覚多様性~新版「色のふしぎ」と不思議な社会 2020年代の「色覚」言論

色のトリセツ

ご覧いただき、ありがとうございます。

近年「多様性」という言葉をよく目にするようになりました。人種や言語、文化・風習などさまざまな分野での多様性が注目されていますが、色の見え方にも多様性があります。

今回はぜひ多くの方に知っていただきたい「色覚多様性」に関する本のご紹介です。


書籍情報

・タイトル:新版 「色のふしぎ」と不思議な社会 2020年代の「色覚」言論

・著  者:川端 裕人

(内容)
あなたと私、「赤」が違って見えているかも。
最新科学が示す「色の見え方」の驚くべき多様性と、悩ましい検査の問題。研究者と対話しつつ、科学作家は思索する。(amazonより)


新版を手にして

「「色のふしぎ」と不思議な社会」の旧版は、5年前の2020年秋に出版されました。私がこの本に出合ったのは2021年の2月で、その時の感想は下記の記事でご覧いただけます。

記事「色覚異常とは?多くの方に読んでいただきたい「色の見え方」に関する本 「「色のふしぎ」と不思議な社会 2020年代の「色覚」言論」」

旧版が大変興味深かったので、今年7月に出版された新版ではどんな点が更新されたのか、旧版と新版を並べて比較しながら読み進めました。新版では、旧版から5年を経て変わった点に、細やかな修正と大幅な加筆が加えられていて、とても「今」を感じました。


色覚のふしぎ

この本では、「色覚異常」とされた人々が社会の中でどういう状況であったか、色の見え方の分析、色覚の多様性に対する課題などが詳しく解説されています。

中でも色の見え方については、色覚の進化や遺伝、脳内処理、ことばとの関係など、多方面からの視点で分析されていて、あらためて「面白い!」と思いながら読み進めました。

また、目が不自由だと聴覚が鋭くなるように、色覚に少々問題があっても、明暗で判別できたり、視覚以外の感覚を活用するなど、体の機能を総動員して色覚の問題をカバーできるという点について、人間の強さと不思議さ、そして、問題解決への希望を感じました。

*参考(色覚を明暗への感度でカバーする人物が登場するドラマの紹介)
記事「韓国ドラマ「あなたが寝ている間に」で描かれた色覚の多様性」


「あなたと私、この赤が違って見えているかも」

「正常」とされる色覚から「異常」とされる色覚まではグラデーションで、なだらかに変化し、線引きすることができません。そのため「正常」「異常」ではなく、「多様性」と捉えるべきだという筆者の考えは、旧版よりもさらに強く伝わってきます。

手始めとして、色覚多様性をより多くの人に広め、正しい理解を深めることが大切です。そして、色のユニバーサルデザインを取り入れる、AI技術を活用するなどして、色覚による「困りごと」を取り除いていくことが必要。

社会状況は少しずつ変わってきていますが、まだまだ身近に改善点が見つかるはずです。

自分の色の見え方が他人と違うなんて、気づいたり、考えたりする機会はなかなかないかもしれませんが、もしかしたら色で困っている人が近くにいるかもしれないことを、忘れず心に留めておきたいと思います。


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