2019年3月31日日曜日

カラーセンス(色彩力)を磨く!その5~基準となる色を確認する

photo by Masumi Chiba

ご覧下さってありがとうございます。
カラーリスト・色彩講師の 千葉真須美です。

第5回目となる「カラーセンス(色彩力)を磨く!」シリーズ、
今回は「基準となる色を確認する」です。



基準の色を確認して、感覚の軸をしっかりさせる


色を観察したり、集めてみたり、組み合わせてみたり、
色に親しんできたところで、
書籍や色票を参考に 色を確認してみましょう


「その1 ~ 色を観察する」で、
「赤」と認識される色にも
橙に近い赤、赤紫に近い赤、明るい赤、暗い赤… と、
さまざまな色があるというお話をしました。

では、その基準となる標準的な「赤」
-混じり気のない純粋な「赤」はどんな色なのでしょう?


人によって色の感覚は異なります。
例えば、あなたが「これが純粋な赤」と感じる色と、
私がそう感じる色は、もしかしたら違っているかもしれません。

また、「赤」と呼ばれている色にも幅があります。
例えば、色鉛筆で「赤」と表示されていても、
メーカーが違うと色も微妙に違いますよね。

そこで、一度色を確認してみましょう。
色を確認することで、
「なるほど!これが標準的な「赤」なのね!」
-と、あなたの色彩感覚の中に
しっかりとした色の基準ができていきます。

もちろん赤だけでなく、他の色も確認してみてください。

確認する際は、書籍色票 など印刷物を参考にしましょう。
パソコンやスマホで見る色は光の色であるため
物の色と見え方が異なりますし、ディスプレイによって
色が違って見える場合があります。

書籍でしたら、色の表示の他に、色相環やトーンなど
色彩体系が解説されているものが望ましいです。
(でも、色彩関係の書籍はお値段が高いですよね…。)

私の一番のおすすめは色票(カラーカード)です。
書店で色彩検定テキストの側によく置いてある
「新配色カード199a」ならお値段もサイズもお手軽です。



新配色カード199a













ただし、このカードには
赤、青…といった色名の表示がありません。
初めて手にする方には少々分かりづらいので、
別の記事でカードについてご説明しますね。

【関連記事】
カラーカード(配色カード)の使い方~1.カードの構成(1)
カラーカード(配色カード)の使い方~2.カードの構成(2)
カラーカード(配色カード)の使い方~3.活用法

カラーセンス(色彩力)を磨く!その1~色を観察する
カラーセンス(色彩力)を磨く!その2~好きな色を集める
カラーセンス(色彩力)を磨く!その3~色を組み合わせてみる
カラーセンス(色彩力)を磨く!その4~慣用色名に強くなる
カラーセンス(色彩力)を磨く!その6~色の分量・配置に注目




2019年3月24日日曜日

伊丹十三さんの色彩感覚に驚く「ヨーロッパ退屈日記」

伊丹十三さんご自身が表紙をデザインした「ヨーロッパ退屈日記」

ご覧下さってありがとうございます。
カラーリスト・色彩講師の 千葉真須美です。

最近読んだ 伊丹十三さんのエッセイ「ヨーロッパ退屈日記」
1ページ目から衝撃でした。そこにはこんな表現が…。

『彼は、サモン・ピンクの皮膚に藁(わら)色の髪をした、
 雀斑(そばかす)の多い青年で、鶯の糞の色の背広、
 血膿(ちうみ)色のネクタイ、それにブルーの方眼のシャツを着ていた…』

前々回の記事
「カラーセンス(色彩力)を磨く!その4~慣用色名に強くなる」
慣用色名について取り上げました。
この文章の「サモン・ピンク」「藁色」という色名は
慣用色名として用いられている色の名前ですね。

しかし「鶯の糞の色」「血膿(ちうみ)色」はどうでしょう?
私はこれらの表現を初めて見ました。

鶯の糞は、美肌効果があると江戸時代から
化粧品の原料として用いられていて、
色は淡いグレイッシュなグリーンです。
血膿は血の混じった膿のことで、
濁った深い赤といったところでしょうか。

どちらも美しい表現とは言い難く、著者がその色に対して
好感を持っていなかった様子がうかがわれます。
それにしても、このような表現をサラリと用いるなんて凄い!

伊丹十三さんは
役者から映画監督になった方という印象が強いのですが、
じつはデザイナーでもあり、この作品の中では
色に対する繊細さやこだわりが強く感じられます。

カクテルについて綴られた章では

『わたくしは、彼女の、その日の気分や、好み、アルコール許容度、
 そして服装の色などをおもんぱかって、これ以外なし、という
 カクテルをピタリと注文する悦びは、男の愉しみとして
 かなりのものと考えるのだが、いかがなものであろうか。』

と述べています。
服の色に合う色のカクテルを選ぶなんて、
いかに 色、ビジュアルを大切にしていたかが解りますね。

ファッションだけでなく、食や街並みについても
伊丹さんは繊細かつ明確な美意識を持っていて、
このエッセイが今から50年以上も前の時代(1965年)に
書かれたとは信じられません。

巻末の関川夏央さんによる解説では、

『伊丹十三は言葉と文字を気にする人だった。…
 赤いのアカを、赤い、朱い、紅い、赫い、丹い、緋いと
 使い分けないと気分が「淪(しず)」んだ。』

とあり、伊丹さんの凄さをダメ押しされました。

驚きと共に
カラーリストとして刺激を受けた一冊でした。






2019年3月17日日曜日

「イエべ」と「ブルベ」~ パーソナルカラーの落とし穴

photo by Masumi Chiba


ご覧下さってありがとうございます。
カラーリスト・色彩講師の 千葉真須美 です。

イエべブルベ
テレビ、雑誌、ネットなどのファッション&メイク情報で
頻繁に目にする言葉となりました。

あらためてざっと解説しますと、 
イエベイエロー・ベースカラー の略で
黄みを含む暖かい印象を受ける色。
ブルべブルー・ベースカラー の略で
青みを含むクールな印象を受ける色。 

全ての色はこの二つに大別され、
それぞれのグループで色をまとめると
調和のとれた美しい組合せとなります。 

この理論をファッション&メイクの分野で応用したのが
パーソナルカラー(フォーシーズンなど)です。 

イエベ・タイプ に分類される方はイエベ・カラーで、
ブルべ・タイプ に分類される方はブルべ・カラーで、
ファッション&メイクを統一して調和を得るのが
パーソナルカラーの考え方の基本です。

さて、ここからが今日私がお伝えしたいことです。 

それは、

イエベ・ブルベ にとらわれ過ぎないことも大切!

ということです。 

実際に、イエベ・ブルベに忠実になり過ぎるあまり、
自分の色の世界を狭めてしまう方が少なくないのです。 

パーソナルカラー診断をされる方の中にも、
「あなたはイエベなので、
 イエベ以外の服もコスメも捨ててください。」
とアドバイスする方がいらっしゃいます。

しかし、そうなると
最初から色の半分は使えないことになりますよね?

それに、異なるベースカラーの組合わせ、
即ちイエベとブルべの組合わせは
調和の取れない美しくない配色でしょうか? 

そんなことはありません。
イエベとブルべの組合せで素敵な配色はいくらでもできます。 

例えばこちらの配色です。







イエベのグリーンに
同じイエベのオレンジとブルべのピンクを
それぞれ組合わせてみると…

オレンジの方がしっくりと馴染みます。
しかし、ピンクもとても新鮮で可愛いですよね。 
春先のメイクカラー(アイカラー&リップカラー)で
よく見かける組合せです。

この他ファッションでも、ネイビーのデニム(ブルべ)に
ブラウンのシューズ(イエベ)といった組合わせは
普通に行われていますし、良く合っています。

また、パーソナルカラー診断で
どちらかのタイプに分類されても、
もう一方のグループの中にも似合う色が存在します。

このように、イエベとブルべとの組合せで
素敵は配色はいくらでもあります。
どちらか片方だけに限定する必要はありません。

イエベ・ブルべは取り入れやすく実際に調和するので、
これを土台としてさらに使う色の範囲を広げていくのが
おすすめです。私自身もそうしています。

イエベ・ブルべ が全てではありません。
あくまでもカラーコーディネート法の一つです。

それを頭のどこかに置いておいてくださいね。





2019年3月10日日曜日

カラーセンス(色彩力)を磨く!その4~慣用色名に強くなる

カラーセンスを磨く
Photo by Masumi Chiba

ご覧下さってありがとうございます。
カラーリスト・色彩講師の 千葉真須美です。

「カラーセンス(色彩力)を磨く!」シリーズ、
今回は「その4~慣用色名に強くなる」です。



色名の由来を知って、色をより深く楽しむ


慣用色名 とは、自然や物などに由来する色名のうち
広く一般に通用するようになった色名のことです。

例えば「桜色」。この色名から桜の花びらのような
淡いピンク色がすぐに思い浮かびますよね?

慣用色名は 自然や物などに由来する ため
色のイメージが具体的に伝わります。
「淡いピンク色」では淡さの程度がいま一つ不明ですが、
「桜色」ならその幅がぐっと狭まります。
それに言葉の響きも素敵ですね。

慣用色名を意識することは、
-「桜色」と「紅梅色」の色の差はどれくらいだろう?
-「若竹色」と「老竹色」- 確かに若い竹と年を経た竹では
  こんな色の違いがあるなぁ…
なんて、色の捉え方が繊細になったり深まったりする
きっかけになると思います。

慣用色名の中で古くから伝統的に使われている色名を
伝統色名 といいます。
上の写真の トンボ鉛筆 色辞典IROJITEN では
それぞれの色が伝統色名表示されていて、
なんとも風流ですし色名の勉強にもなります。



慣用色名を調べるには?


慣用色名、特に伝統色名に関する書籍が
結構出ているので、これらが参考になります。
色名の由来がしっかりと解説されているものは
読み物としても楽しめます。

もっと手軽に調べたいなら、携帯アプリがおすすめです。



私が使っているのは
「色彩ヘルパー」という
アプリです。
カメラで写した色のデータが
表示されます。

この写真は、
右側の円の中央部分にあたる
花びらの黄色を測定したもので、
左上の枠の中の一番上に
「やまぶきいろ(山吹色)」と
慣用色名が表示されています。







また、違うページでは
主な色の一覧も見られます。

ある色を選んで、
右側の「>」で展開すれば、
その色の詳細なデータが見られます。
















最後に注意点を2つ。

・慣用色名が示す色には少々幅がある場合があります。
 あの本とこの本とでは「桜色」が微妙に違う!
 なんてことは珍しくありません。あまり神経質にならず、
 大体の色のイメージをつかんでいただければOKです。

・ただし、検定試験においては「JISの慣用色名」が対象ですので、
 テキストに表示された色をピンポイントに覚えてください。

身近な物や街中で、あるいは自然の中で
慣用色名を探してみるのもいいですね。


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2019年3月3日日曜日

エスニックな香りの三色配色~「彼が愛したケーキ職人」

ご覧下さって
ありがとうございます。
カラーリスト・色彩講師の
千葉真須美です。

先週行われた
アカデミー賞授賞式では、
賞レースの行方に加え
美しいドレスの数々も
見どころでしたね。
(今年は特に ゴールド、
 パープル系、ピンク系が
 目を惹きました。)

さて、
アカデミー賞受賞作品を
後回しにして、こちらの
作品を観てきました。


「彼が愛したケーキ職人」です。

上の画像は日本公開用のポスターです。
ベースカラーがパンや焼き菓子を連想させる
美味しそうな色ですよね。
私はフランスかベルギー辺りが舞台の
ちょっとロマンチックな
大人のラブストーリーかな?と思いました。

ところが、主な舞台は中東のイスラエル、
内容はちょっと悲しいしみじみとした物語で、 ポスターの配色から受けるイメージとは少々違う作品です。



中東の街を彩るエスニックカラー


この映画で印象的だったのが
街並み、インテリア、ファッションに見られた
ターコイズブルー・白・レンガ色 です。









例えば、街並みを映し出した時の
レンガ色の屋根、白い壁、ターコイズブルーの窓枠。
ポスター中央の写真にも レンガ色の壁と、
レンガ色と同系色のカーディガン、
ターコイズブルーと同系のインナーが見られます。

ターコイズブルーはトルコ石(ターコイズ)の色、
レンガ色は赤土の色で、この二色の組み合わせからは
エスニックなイメージが得られます。
そこに白の明るさが加わった三色配色です。

これに似た配色の イタリア国旗の三色、
フランス国旗の三色と比べてみるとどうでしょう?









この2つのカジュアルさ、スポーティーさに比べて、
やはりどこか民族的な雰囲気を感じますね。

イスラエルらしい美しさと言える
三色配色であると感じました。